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パズルゲーム感想アーカイブ

窓際に滴る寂寞の雫 “Shizuku”

解ける頃には長雨もきっと止む。

滑り始めたら止まらない床のギミックというのはどこかしらで見覚えのあるものだが、この作品はそれをルールにしたパズルである。

物悲しくも癒される雨音のSEと哀愁の漂うBGMの中プレイするこのパズルは、一見すると肩の力を抜いて解くカジュアルなパズルに見えるが、実際は暇潰しとしてやるにはやや難しい。
滑る床のパズルはゴールから逆算していくとわかりやすいことが多いが、クリア条件が全てのパールを集めることとゴール地点が決まっているわけではないこと、そして滑る過程で動かしたり作動するギミックの相乗効果によって、この作品は安易な逆算を許しはしない。
解けたとしても挑戦課題として最小手数が設定されているので、一つの問題で二度悩まされることになる。
(あと一つ別枠で、とある壁を複数回叩かせるという課題もあるが、こちらは蛇足のように感じた。総じて到達の難しい箇所や往復の難しい箇所に設定されているものの、隠れたものを探させるスタイルなので、探索の作業感やクリアが二度手間になる面倒臭さのほうが大きく上回った。)

物憂げで控えめなゲームの雰囲気に則ってか、絶望的なまでに詰まった問題もなければ圧倒的な達成感を得られる問題もなかったが、平均して十分な歯応えがあったのは間違いない。じっくり考えられて、かつ簡単すぎず難しすぎずという、暇潰しのおつまみパズルから更に一段階上がった良質なパズルだった。
エレガントな手数の詰め方を要求する問題も少なくなく、基本的なレベルデザインでも手数の詰め方でも随所に美しさが光っていた。

余談だが、私はBGMをオフにして雨音だけを流してプレイしていた。だが、このゲームのBGMは単体で非常に気に入っている。
こうなってしまったのは私個人の気分によるものだけど、BGMってゲームに合うように作るものだろうから、せっかく気に入っているのにそれが嵌まらないというのは好ましくないことなのではないだろうか?

追記

この “Shizuku” という作品は “Quell” および “Quell Reflect” の2作品を合わせた日本向けローカライズ作品なのだが、Quell Zenをプレイするにあたりシリーズ作品をまとめて購入、オリジナルに触れるという形で一度解いた問題を解き直すことに。

たったの1年前なのにさっぱり覚えていなかったあたりに自らの愚かしさを感じずにはいられなかったが、Quell2作で詰まった問題がどれもShizukuで詰まった問題ばかりで、いかにShizukuの問題が厳選されていたかがわかる結果となった。

(Quell Reflect: 1975-1-4 “Sequence”) 数少ない壁とスパイクによって移動が制限される中、木製スパイクとたった1個のクローズゲートをうまく駆使しなくてはならない問題
Quell Reflect: 1975-1-4 “Sequence”
濃密な7手が印象的な良難問。Shizukuにも収録されている。

雨音SEがあるのがShizukuだけということでBGMオフの件に得心がいったのだが、今度はなぜShizukuにだけ雨音SEがあるのかが気になってしまった。
話を通してこのほうがいいとの判断で決めたことなのか、それとも勝手に足されたSEなのか……。

関連項目

Quell Puzzle Anthology収録作品

同デベロッパーによる他作品の感想アーカイブ