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パズルゲーム感想アーカイブ

甘くも苦い郷愁の雫 “Shizuku Memory”

はたしてその一滴がいい方向へ流れるとは限らない。いいことばかりが思い出ではない。

前作 “Shizuku” より新たなギミックを加え、総問題数も112→184と大幅に増量。
Shizukuの憂愁な雰囲気は舞台の廃墟化の進行によりさらに重みを増し、語り手による思い出語りが加わったりと一見すると前作からパワーアップした続編に見える。

しかしながら、今作のレベルデザインは明らかに前作より劣化していた。
追加されたギミックにそもそもゴールを明確にしてしまうものがあったり、ギミックを増やしすぎたことで解決すべき事柄の順序が簡単に見えてしまったりと、とにかく今作のレベルデザインは逆算がたやすい。Shizukuの直後にプレイすればなおさらである。
また今作では手数制限があまり苦にならなかったように感じた。前作のようにエレガントに急がば回らずとも、素直な解き方で最小手になることが多い。

今作のパズルに手応えがないという事実はデータにも明確に表れていて、問題数は1.6倍になったにもかかわらずプレイ時間は0.7倍と、思考の慣れもあるだろうがこれはつまり今作の難易度がざっくりとした見積でも前作の半分程度しかないということだ。
舞台は廃墟なのに見た目だけ彩り豊かになって、レベルデザインはその犠牲になるというちぐはぐな進化をした作品と言える。

ちなみに、おじさんの思い出語りは断片的すぎてさっぱりわからなかった。
冒頭に心臓が飛び出そうなほどビビったことしか覚えていない。というかあれが強烈すぎる。

追記

“Shizuku” と “Quell” および “Quell Reflect” の関係と同様に、“Shizuku Memory” は “Quell Memento” の日本向けローカライズ作品である。

同様に解き直してみたものの、Shizuku Memoryで全く苦戦しなかったためか記憶がShizuku以上に曖昧で、そのせいか予想外に時間がかかってしまった。
しかしながらギミック偏重で問題が単調に感じてしまうという印象は相変わらずだった。

関連項目

Quell Puzzle Anthology収録作品

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