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パズルゲーム感想アーカイブ

心濯ぐ清流 “Spring Falls”

せせらぎは澱むことなく永遠に清いまま。

水面に触れる大地を沈降させることで緑を広げ、全ての花の芽に緑を届け芽吹かせられればクリアとなる、ヘックス制の2.5Dパズル。
他に類を見ないユニークなルールのパズルだが、水面を増やすことで選択肢を広げるという陣取りゲームのようなルールはストラテジーの趣向がやや強いだろうか。

ルールは一にも二にも水である。それぞれのマスは高さを持つが、窪んだ場所に水が流れ込めばそこに水が張り、仕切りを取り払い水を流せば低きへと順に流れ落ちていく。
水は隣接したマスを湿らせるが、水がなくなってしまえば一度湿ったマスでも乾いてしまう。プレイヤーが行える操作はマスの沈降だけだが、この沈降を起こせるのは湿ったマスに限られる。つまり水なくして操作は行えない。
湿ったマスは緑化したマスに同じ高さで隣接すると同様に緑化していき、緑化のゴール地点としてこれを花の芽まで繋げていく。
水源は水溜まりだけではなく、雨や小川のように絶えず水を供し続けるものとして登場したりなど、水をモチーフにすることで生まれるルールの幅は視覚的にも心地よさをもたらしてくれる。

文字に書き起こすと複雑に見えるが、やってみれば簡単に、直感的に理解することができる。そしてレベルデザインもまた直感的に解けるように調整されているが、その内容はそれだけに留まらない素晴らしいものとなっている。
どの問題も数手で解けるような簡単な内容だが、最小限にまで抑えられた小さな盤面の中には、位置や沈降の順番など、1手を間違えると詰む罠が詰められている。つまり、一切の余白等なく確かなねじれが確立しているのだ。
水量を調節して水位を上げる問題などを見るに、より厳密なストラテジーとしていくらでも複雑にすることはできただろうし、実際水がどこにどれだけ流れ落ちるかに関しては唯一直感で測りきれず理解が曖昧なまま終わってしまったが、それに依存せずとも直感で解ける範疇でエレガントなパズルは実現可能だと示したのは見事という他ない。

考えるまでもない問題も少なくなく、エレガントといえど難しいわけでもなく、量も少ないためすぐに終わってしまうが、確かなねじれがありながら気持ちよく解けるパズルとしてのバランス感覚は素晴らしく、終始落ち着いた気分で解くことができた。
この晴れやかなプレイ体験はマヌケの心の中にずっと残り続けるだろう。