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パズルゲーム感想アーカイブ

繋がる内と外の狭間で “Takoway”

狭い実験空間の中には、無限大の可能性。

内と外の2面を切り替えながらゴールを目指す、等角投影のグリッド制パズル。
主人公のタコが移動できるのは現在自身が張り付いている面 (壁沿いならば繋がっている左右の2面) だけで、低い段差を超えることすらできないほどその移動能力は貧弱だが、プレイヤーには内と外とを区切るスライダーがあり、これを操作することでタコを別の面に張り付かせることができる。
盤面の見た目こそ立体的だが、その中身は裏表を切り替え足場を入れ替えていく2層のパズルといった具合である。

このパズルは等角投影をルールにうまく落とし込んでいる。パズルにおいては視覚的なわかりにくさがつき纏いやすいこの視点だが、このパズルでは入れ替わる内容を明確にすること、そして同じ座標でありながら別の点にワープすることに説得力を持たせるという使い方がなされている。
この視点をただ見やすさのためだけではなくルールに還元する使い方、それも一つのアイデアに複数の枠組を組み込むような使い方をしているのはエレガントである。

さらに、導入されているギミックがルールにマッチしていて、互いにねじれ合った綺麗なレベルデザインの問題が多い。
盤面のサイズが小さく選択肢も少ないが、たった2面だけでも通れるものと通れないものは段階的に、そして互いに連動して切り替わる。何も考えずに進んでいると箱の中で迷子になったり閉じ込められたかのような感覚に陥る。

このパズルは極論偶奇性を合わせるだけに過ぎないが、入れ替わるエリアはねじれ重なり合っているのでゴールから単純になぞるだけで勝手に解けてしまうような単調さはない。
問題数も少なければ難易度の天井も低くボリュームは薄いが、基本ルールの完成度が高いためかなりのポテンシャルを秘めたパズルだと思う。私はその可能性に覚えた感動をもってこの作品を良作と呼びたい。