ずれていく時間軸 “The City of Time”
原題は『时间之城』。「城」という言葉の意味は日本語とは異なり、中国語では「街」を意味する。
ここではそれに関する説明は省くが、同じ綴りの言葉がなぜそれぞれ違う意味へと分かれていったのか、その背景には興味深く面白いものがある。
ステージに散らばった花びらを全て集め、開花した花のもとへ辿り着けばクリアとなるパズルプラットフォーム。操作するのは時間を巻き戻す力を持つ女の子。
プレイヤーが可能な操作は主人公の左右移動および時間の巻き戻しだけだが、この巻き戻しとその影響をどう処理するかがパズルの内容となっている。
ステージは時間の経過と共に足場が崩落したり花びらの位置が変わったりするが、この時間の流れはリアルタイムの経過時間ではなく主人公の移動量という形で計測される。つまり主人公の行動履歴がそのままステージ全体のタイムラインとなる。
主人公が行使する時間の巻き戻しは自身の移動やステージの構造の変化といった全体のタイムラインをまとめて巻き戻すが、花びらを回収した事実が巻き戻ることはない。この性質を利用して、普通ならば100%落下死するであろう場所にある花びらをも回収することができる。
このパズルを複雑にしているのは主人公を巻き戻しの対象から外すことのできるアイテムである。これを使うことで、主人公が到達する前に離れていく花びらを引き戻して回収できたりするのだが、このギミックのポイントは主人公とステージの時間軸をずらしてしまうことである。集めるべき花びらが一列に並んでいるとは限らないので、うまく一列に並ぶようにこのずれを調整する必要がある。
さらにこのアイテムは使えるのが一度きりなうえ、回収してしまうと使い切るまで通常の巻き戻しが使えなくなるので、時間軸をどうずらすかだけではなくいつ使うかも考えなければならない。
同時進行から始まる時間軸をいつどうずらすべきか、そのためには限られた手札をどの順に、どのタイミングで処理するか。このゲームは少ないルールとギミックでねじれの枠組を作ってみせたスマートなパズルであると言える。
しかし、なんと全部でたったの20問しかないため呆気なく終わってしまった。とはいえ、そのたった20問に今後を占いそうな濃い情報が詰まっていたのは確かである。
まず一つが、少ない問題数であるにもかかわらずこのパズルに面白さを感じたことだ。時間軸を操作してタイムラインを合わせるという内容がユニークだし、ステージや主人公から独立した別の時間軸を持ったギミックが出てきたりした時は、これが発展すればもっと面白くなるのではないかという期待も抱いた。
しかしながらこれと相反することも一つ。このパズルの面白さを窺えたのはあくまでも時間軸操作という静的なパズルに関してだけであって、一度その内容にシビアなアクションが加わり動的なパズルとなると途端につまらなくなるのではないかというおそれだ。
少ない問題数でも操作精度を要求するステージがあったことに、アクション偏重の片鱗が見えた気がした。
単調さや水増しがなかったためか、その短さに反して残った印象は強い。それはこの作品そのものに対する印象とは少し異なるものかもしれないが、それでも希望のほうが大きく残った。
制作者の今後の活躍に期待したい。