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パズルゲーム感想アーカイブ

ミニマルユニット・オートマトン “[the Sequence]”

スペースは広いのに、できることが少ない。
ああ、なんてもどかしい!

白い光で示されるバイナリデータをゴール地点であるコレクタまで詰まることなく流せるように、各種モジュールを並べるパズル。
詰まることなくというのがポイントで、互いに邪魔することなく作用し合えるような連続した動作を形作ること、つまり「シーケンス」を組み立てるのがこのパズルの目的である。

経路をなぞって順にモジュールを並べていくだけで解けるのは最初だけである。問題を解き進めるにつれ、モジュールの位置や方向、オンオフの状態といったベクトル要素、それらによって生まれる周期などの各種パラメータの調整や、モジュールを重ねての移動など、モジュール同士の作用を考慮して組み込む力が求められるようになる。
そしてこのパズルのレベルデザインの特徴として、見た目の盤面の広さに反して自由がほとんどないことが挙げられる。
一見すると余剰スペースが広く自由な組み合わせができるように見えるが、実際は安直な解答を先回りで潰す形で障害物が設置されているので、取れる手立てはモジュール数の制限よりもさらに少ない。
モジュールを使いきらなくても解けてしまう問題も存在しているが、レベルデザインの傾向を見るに問題の練り込み不足というよりは思考を固執させるためのブラフとして用意されているように感じた。

ちなみに、おまけとしてSandbox問題集が存在するが、こちらはモジュール数の制限を撤廃する代わりに盤面全体で障害物の配置をきつく設定するという、本編とは真逆の設計思想のパズルになっていて、結果として解答のアプローチも全く別のものとなった。
普段は自由に使えないものが使い放題になる反動か、エレガントな解答の追求よりもモジュールの暴力で無理やり押し込むというストレス発散に近い乱暴な解答が出てくることが多かった。

([the Sequence]: Sandbox 21) 移動と回転のモジュールを仕込んだスイッチを大量に配備して隙間の広い道を大回りで渡るという、非常に無駄の多い解答
([the Sequence]: Sandbox 21) 移動モジュールだけを仕込んだスイッチで挟んで互いに位置をずらしながらバイナリを持ち運ぶという、見た目も動きもスッキリした解答
Sandbox 21
左: 初見での解答、右: 感想執筆前に解き直した際の解答
自分が残したものとはいえ我ながら酷い。別の作品として独立していれば取り組む姿勢もまた違ったものになっていたかもしれない。

ミニマルかつシンプルであるがゆえに解法のエレガントさが際立つ良質なパズルだった。
Sandboxもそれはそれで楽しかったのだが、この作品の美しさとは広い盤面で最小限まで選択肢を削りながらも同時にスマートに難しくしたことにあるだろう。

関連項目

Best Foods to Boost Your Brain収録作品