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パズルゲーム感想アーカイブ

泡は気まぐれ魚心 “Tiny Bubbles”

泡の形状は界面が最も小さくなる形で現れる。単体ならば最も表面積が小さい多面体、つまり球体だが、泡同士がくっつき合うとその計算が途端に複雑になることは想像に難くない。

同心円上に広がるカラフルな泡の集合体を盤面として、同じ色の泡を連ねて消していくという、いわゆるマッチ3パズルのゲーム。
この手のパズルは矩形の枠にブロックのピース、重力は一方向とわかりやすい見た目に単純なルールであることが多いが、この作品は枠が不定の円形でピースは泡、そして発生から結合、消滅に至るまで挙動の一切は物理演算に基づいた不規則な動きとそのルールはとてもユニークである。

このパズルでプレイヤーが持っているのは泡ではなく泡に差し込む色であり、色を足していくとRGBの法則に従い泡の色が変化する。
同じ色の泡が4個以上一続きになると消滅するが、泡は消える前に1秒ほどの猶予があるので、その間に連続して色を差し込み続けられる他、消え始めた後でも完全に消えてしまうまでの猶予があるので、消滅中の泡の集合に同じ色を割り込ませることでまとめて消したり、消滅途中の泡の色を無理やり変えて場に残したりすることもできる。
その内容は作品が纏う静かな海の雰囲気とは裏腹にアクティブである。ゲームスピード自体は泡のように緩やかなので手が回らなくなるほどのせわしさに溺れることはないものの、見た目ほど穏やかなゲームではないことは間違いない。

マッチ3パズルはその簡単さゆえに、暇潰しに遊んでは思いがけない大連鎖を楽しんだり、定石を考え対戦したりハイスコアを目指したりなどゲームとしての終わりが設定されていないものが多いが、この作品はクリア条件が設定された問題を手持ちの限られた色や手段だけで解いていくというスタイルで、初手の固定盤面に固定のクリア条件という形で設けられた個別の問題が全部で170問近く用意されている。
答えのないエンドレスなパズルが苦手で毛嫌いしているマヌケにとってマッチ3パズルというものはとっつきにくいジャンルだったため、このスタイルのおかげで貴重な経験をすることができたが、しかしながらマヌケが抱いた感想は快いものではなかった。

問題の内容は大別すると二つに分けられる。一つはやり直すごとに手持ちの色のパターンが変わり、ランダムに泡を足していく魚が盤面に変化を与えるという一般的なマッチ3パズルのゲーム内容に近いアーケードモードで、このパズルのアクティブさを手懐けるテクニックが求められる。
もう一つは何度やり直しても色のパターンは同じで魚が水を差すこともないパズルモードで、泡の挙動を決める物理演算への理解が求められる。

一見するとこの作品は、落ちものパズルのような刻々と変化する状況へ対応する動的なパズルと、ロジックパズルのようなゆっくりじっくり考えて一つの正解を導き出す静的なパズルの両方を網羅しているように見えるが、どちらもルールの限界からくる欠点が目立つようになり結果的にはどちらのパズルも楽しくなくなるという中途半端なものだった。

パズルモードはざっくりと言い表すならば崩れかけのジェンガのどこを抜き取ればいいかを問われているような気分といったところだろうか。マッチ3パズルとしての問題というより、物理演算パズルの微妙なラインを攻めさせるような問題作りがなされている。
序盤は簡単だが、進めば進むほどクリアラインはシビアになっていく。シビアになるほど物理演算に由来する泡のふるまいの曖昧さが際立つようになってくる。泡の数を計算するのは簡単だが、泡を消した後の残りの泡の挙動や、泡の大きさを調整するのは途方もなく面倒なもので、しかもその結果は計算というよりもしらみ潰しに色を差した結果なのでそこに確かな納得はなく達成感にも欠ける。
手持ちの色が余るようなレベルデザインの甘い問題も少なくない (というか、実績を見ても意図的に入れている) のだが、いざ正解に至る筋道が細い問題を作ってみると物理演算が形作る細い橋を渡らせるような窮屈な問題になるというのは静的なパズルとして面白いものではなかった。

そしてアーケードモードだが、マッチ3パズルからパズルとしての個別の問題に切り分けてしまった結果、試行回数にものを言わせて状況が整うのを待つゲームと化してしまっていた。
特に面倒なのが盤面に勝手に泡を足していく魚の存在で、これをコントロールする手段が一切ないため結果的に問題を解くためのアプローチはざっくりどう解くかを決めたらあとは魚の機嫌と手持ちの色次第でアドリブという身も蓋もないものだった。
クリア条件には盤面の大きさや特定の泡同士をくっつけるなどといった全体を俯瞰しての展開が必要なものが少なくないというのに、盤面を勝手に荒らしてまわる存在を加味して解かなければならないというのは大きなストレスだった。クリア一歩手前のところで何度魚に妨害されただろうか?

このように、パズルとして解くには挙動のルールが曖昧なくせにクリア条件が厳密すぎるせいで達成感がなく、かといってマッチ3パズルとして解くには長く遊べもせずクリア条件の厳しさゆえに爽快感もなく盤面を完全に制御できないためストレスが溜まるだけと、静的動的どちらのパズルとしてもとにかく中途半端なのである。

とはいえ、泡をモチーフにした物理演算マッチ3パズルという大枠そのものは面白かった。最初のほうは厳密な整列のルールがわからなくても概ね予想通りに動いてくれる泡を見て感動を覚えたものだ。
だからこそ、このパズルが中途半端になってしまっているのが残念でならない。

ちなみに、この作品にはクリア条件の緩和やヒントを提示する機能があり、それを使うためのチケットを集めるためのスタミナ制のエンドレスモードが用意されている。別になくても問題ないのだが、このモードには同色同時消し15個の達成という狂気の沙汰とも言えるような実績が用意されている。
ヒントを使えるようにするためのモードなのでそれに関するヒントや手助けが得られることはないし、方法を検索してもマヌケの観測範囲には有効と思えるようなものが転がっていなかったが、からくも実績解除することができたので攻略方法を残しておく。

Infinity15個消しのヒント

リスタートした時の∞型の盤面を利用し、消滅が始まる前に中央の紫と左右の赤・青を繋げて紫の塊を作ることで実績解除。
このままだと赤と青を待つ運ゲーのままだが、終了した時の状況がそのまま保存されるという仕様を利用することができれば一気に楽になる。
運が良ければ2回に分けずとも15個消しが狙えるが、1回だけだと普通は慣れても12〜14個が限度なので、分けて解くほうが圧倒的に簡単である。
再開時は消滅までの猶予が前回の分だけ減っていることに注意。大事なのは消滅を遅らせるためにリズミカルにテンポよく配置できるようにすること。
黄色は一箇所に集めてハサミで泡ごと潰せば盤面の拡大を抑えられる。単色の赤青がうまく隣接するように残しておくとハサミの無駄打ちが防げるが、慌てて隣接を作ろうとして操作ミスをするくらいなら、ハサミは黄色用と割り切ってしまってもいい。
紫消滅後の黄・青を利用しての緑というのも選択肢にはなる。緑をメインにする場合はある程度ゆとりを持って下準備をすることができるが、上下の緑を確実に繋げる必要があること、魚の盤面荒らしの被害に遭いやすいというのがネックになる。

ちなみにこの実績はアップデートでその名称を変えていて、かつては “Teens Are Keen” だったが現在では “Convene Fifteen” となっていて、それが余計に情報を探しにくくしてしまっている。
マヌケの観測範囲では他にも茶色の泡を多方面に分けて作っておき順に繋げるなどのアイデアが確認されたが、消滅の猶予を一気になくしてしまう魚を擁している以上断続的に色を足す方法で安定した実現は難しいだろう。
どのような方法で解くにしろ、その過程でイメージ保存を利用するというのは制作者も想定していると思うけど、真面目なパズルとしての攻略ではなく仕様の穴を突かせるようなやり方は気に食わないなあ。