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パズルゲーム感想アーカイブ

食い意地はヘビをも重ねる “SNIKS”

「帯に短し襷に長し」を体現したような作品。この作品は手軽なパズルと歯応えのあるパズルの境目にいる。

両側に顔がついた色とりどりのヘビ達をスライドさせて、全てのフルーツを同時に胃に収められるようにヘビの位置を揃えるパズル。
頭を引っ張れば残りの部位も軌跡を辿るように動くというヘビゲームのシステムを採用したスライドパズルはいくつかあるが、このパズルの最大の特徴は一般的なヘビゲーム派生パズルでは手詰まりに等しいヘビ同士の干渉を条件付きの重なりという形で認めていることだ。

このパズルでは、静止しているヘビに対して頭以外の胴体部分であれば進入することができる。自分の胴体を交差させることはできない他、頭を重ねた後次に進めるのはそのヘビ以外のマスだけと重なれるのは1マスだけだが、あくまでも同じヘビに連続して2マス以上固執することを禁じているだけなので、別のヘビの胴体ならば続けて進入することもできたり、一度進入したヘビ相手でも一度外に出たならば方向転換して同じヘビの別の部分に進入できる。
またヘビの重なりにはもう一つルールがあり、別の色のヘビ同士が重なるとRGBの法則に従い重なった部分の色が変わる。1匹だけでは実現できない色のフルーツも当然登場するので、このルールによって重なる場所にも指定が入ることとなる。
このパズルのフルーツはあくまでも終了条件となる位置と組み合わせを指定するだけのものなので、食べた瞬間に消えて身体を伸ばすようなルールはない。混色でしか実現できないフルーツだらけの盤面ともなれば縦横無尽にヘビを折り重ねることになる。

ヘビゲーム派生のスライドパズルでありながら折り重ねを考慮するというユニークなパズルではあるが、レベルデザインは割と甘めだった。
普通のスライドパズルに寄せて作るとヘビの重なりの分だけ余白ができてしまうのでその分の易化もあるのだろうが、全体的に盤面のサイズが小さかったことや、ヘビの重なりを使わない純粋なスライドパズルとしての問題が簡単だったことを踏まえると、そもそも難しくなり過ぎないように調整されていたように感じた。
残り数問というところで急に難しくなるが、その難しいラスト数問で盤面の拡大といった乱暴な難易度の上げ方をせず、ねじれの枠組を作り余白を削るという基本に忠実かつエレガントな良難問が用意されていたあたりからも、甘めのレベルデザインが調整の結果であることがわかる。

パズルの難易度の制御という非常に大変なことをさらりとやってのけていた末恐ろしいパズルではあったものの、やはりパズルの奴隷たるマヌケとしては手軽に寄せないでほしかった。
身動きの取れないもどかしさ、雁字搦めからの解放という達成感が薄まってしまっていたのはあまりに惜しい。

関連項目

Robots, Fruits & Puzzles収録作品