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パズルゲーム感想アーカイブ

注文の多いパーティ・ピープル “Partyrs”

間違った注文をしておきながら、注文と違うと言われることのなんと理不尽なことか……。

パーティの参加者が全員満足できるように彼らの配置を整える位置交換式のパズル。
彼らは何の近くにしてほしいとか、誰の隣は嫌だとか、一人一人が独自の要望を持っているので、それらを全て満たす位置関係を考えながら配置を入れ替えていくこととなる。

解は一意というわけではないという余白の広さや、絶対的な位置関係を指定する要望の割合による位置の確定のしやすさ、そして手段たる位置交換に一切の制限がないというたやすさによって、このパズルは基本的には非常に簡単なのだが、手数評価の導入によってこれらの甘さを逆手に取る形で難しさを確保している。解が一意でないがゆえに、手数を減らす試みだけでなくそもそも規定手数が達成可能かどうかへの判断も必要になる。
それでもなお簡単ではあったものの、問題数とプレイ時間の密度や詰まった問題の数と内容を鑑みると、少なくとも単調ではなかったと言える。

しかしながら、このパズルはシステムに致命的な欠陥を抱えてしまっている。それも一つや二つ程度ではなく、テストプレイをしたのかが疑わしいほどだ。
要望の内容が表示されない、間違った要望を表示しているなどといった要望の表記ミスがある問題が1割、規定手数の達成が可能か疑わしい問題が1割あるという始末である。幸い解けなくなってしまっている問題はないが、パズルの信頼性は大きく欠けてしまっていた。
手数は逆に規定手数以下を達成できる問題も少なくなく、基準が一体どうやって決められたのかまるでわからない。

さらに、このパズルは問題の大枠からしてつまらない問題も少なからず存在している。手数の代わりに時間で評価を決める問題が1割、謎の物理演算パズルが0.5割存在する。
特に物理演算パズルは隣接判定がさっぱりわからず、何が面白くて入れたのか全くの謎である。

上記の通り、このパズルは本質の面白さを保ちつつ正しく解ける問題はせいぜい6割程度しかない。
手数の可能不可能はソルバーを作れば調べられるだろうが、このような有様のパズルにそこまでの情熱は流石に持てない。

余談だが、パーティメンバーをそれぞれ異なるキャラクターとして独立させたのは面白いと思った。一人一人が表情を変えパーティを楽しむ演出が入ることによる全体的なテンポの悪化に不満は残るものの、個性の付与による関係性の構築は面白さとして決して小さくないプラスだった。実際、システムの欠陥による要望の不一致で正しい条件を探る際は、彼らの嗜好が参考になったものだ。
論理パズルや謎解きゲームのように、この遊びは匙加減一つで別のパズルに分化する可能性もあったのではないだろうか。

関連項目

Robots, Fruits & Puzzles収録作品