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パズルゲーム感想アーカイブ

頭が酔う曲面迷路 “Ubi's Dimensions”

空間認識能力は平凡なマヌケ。テスト結果は嘘をつかない。

曲面を含む立体上で、主人公Ubiを操作してゴールまで辿り着けばクリアとなるグリッド制の2.5Dパズルプラットフォーム。
普通の段差に向かって移動すると重力に従って下に落ちるだけだが、それが曲面化されていた場合、通過すると進入した方向に応じて立体の向きを変えることができる。

パズルプラットフォームらしく、押せるブロックが出てくる問題もあるが、ブロックはUbiとは異なり立体の向きが変わっても常に下向きの重力のまま変わらない。つまり向きの変更と同時にブロックは足場に引っ掛かるまで落下してしまう。
これによって、ブロックの運搬は倉庫番に加えて滑る床のパズルの趣向を持ったパズルとなる。

パズルプラットフォームではあるが、このパズルは重力の克服ではなく、どこを通るべきかを迷わせることを主な枠組としている。どのように段差を降りるかと言い換えれば、一般的なパズルプラットフォームの逆であるとすら言える。
これはブロックを用いた問題でも同じである。どこを目指すべきかはわかっても、どこを経由するかは曲面の接続に左右される。
段差によって道が途切れていること、向きによって接続の方向が変わること、そして何より経由すべき場所を多く挟むことによって、このパズルはまるで複雑な迷路のようになっている。

しかしながらこれがどのようなプレイ体験になったかといえば、気がついたら解けていた、の連続で、狙い考えてパズルを解いてみせたという達成感に欠けていた。
達成感を覚えたのはブロックの運搬を枠組とした問題ばかりで、迷路のような曲面間の移動という主な枠組がつまらなく感じていたのは本末転倒のように思えてならない。

またこのパズルは視認性が悪く、広く歩き回れる場所があると反転した場合蓋となってしまうのだが、視点は横方向に90°ずつ回すことしかできない。しかもこの視点変更はなぜかアンドゥの対象で、テンポの阻害にもなってしまっている。
自由に視点を変えて立体を眺める機能もあるが移動と両立することはできないので、経由地を把握しても移動によって立体の向きがコロコロ変わってしまえば記憶の神経衰弱の始まりである。
迷路と同じく、構造を把握してしまえばあっさり解けるという弱みをこのパズルも持ってしまっているが、意図しているにしろそうでないにしろ、システムの側でもその把握をやりにくくしてしまっている点では迷路以下である。

結果的に、見た目も中身も酔いそうで気分が悪くなるパズルという印象が最後まで拭えなかった。
酔いから醒めてもただ元通りになるだけで気分がよくなるわけでもないのにどうして元気よく解けようものか……。