フリーハンドの盲目的暴力 “Umiro”
自分の描いた線というのは存外に制御のきかないもの。不安定に揺れるものをどう手懐けるかもまた一つのパズル。
走り出すと自動で移動する主人公の経路をフリーハンドで描くパズル。
舞台は色彩を飲み込む黒い影が徘徊する謎の世界で、二人の主人公、HueyとSaturaが記憶喪失の状態で閉じ込められている。プレイヤーは彼らが自身の記憶を収めたクリスタルを集めてまわれるように経路を示し導いていく。
HueyとSaturaに対応する色のクリスタルをゴール地点として、走行経路を一筆書きしてやれば準備完了。任意のタイミングで再生ボタンを押すと彼らは一斉に走り出し、同じ速度、同じペースで描いた軌跡に沿って走っていく。クリスタルは一度に全て集める必要はなく、複数存在する場合はそれぞれチェックポイントとして機能する。
クリスタルの数だけ線引きと再生を繰り返し、全てのクリスタルを集めきればクリアとなる。
クリスタルに至るまでの道のりには敵に相当する徘徊する黒い影が多く存在するが、走るスピードを区間ごとに変えたり、一時停止を指示することは不可能である。その代わりに線は一切の制限なく自由に描くことができる。同じ場所を旋回したり、道の幅をいっぱいに使ってくねくねと走らせることで主人公の移動を制御することになる。
このように、パズルの枠組は自動で移動するキャラクターとギミックの周期の噛み合わせを狙うもので、全体的なルートを考える必要性は薄い。
黒い影の存在によって、このゲームが単調な点つなぎではなくれっきとしたパズルになっているのは間違いない。しかしながらそれは正解に至る筋道が曖昧だからであって、考えることが多くねじれ合っているという意味ではない。
このパズルは解答ツールである一筆に一切の制限がないため、深く考えずともタイミングが合わなかった場所に旋回を入れタイミングをずらすという味気のない乱暴なアプローチでも解けてしまう。これはただの作業の繰り返しでしかないので、実は消極的なパズルに片足を突っ込んでしまっている。
理屈で解くにしても、黒い影のスピードの違いや微妙な周期のずれなどが細かく刻まれていることや、フリーハンドの一筆書きが安定しないのもあって、泥臭い調整作業を完全に避けて通ることはできない。
このパズルに必要なことはやり直しを強要する影の数を増やすことではなく、ラインの残量システムと道の塞ぎ方の再考である。