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パズルゲーム感想アーカイブ

陳腐と狂気が織りなすラブレター “YANKAI'S TRIANGLE”

永遠の愛などフヌケのマヌケに持てるはずもなかったが、向き合った時間に嘘偽りはない。

三角形の各辺の両端に色が割り振られていて、同じ色同士ならば辺がくっつき合う。盤面の全ての三角形がくっついて一つの三角形となればクリアとなる。これをただひたすら延々と繰り返すパズルである。
回転そのものがギミックとなっていて、どう回るかに関して色々と種類があるが、とりあえず触っていれば理解できる。

一見すると奇抜だが、中身は惰性で解けるジャンクな自動生成パズルである。
総手数、解いた問題数、プレイ時間を計測しているのでこれらを詰めるという縛りプレイもできるが、何も考えずにくるくる回しながら嵌まるのを待っているだけでも勝手に解けるし、実際そうしたほうが効率がいい。

しかしながら、このゲームの本質はただただ惰性に任せてパズルを解くことではないと考える。
ストアの紹介文冒頭が YANKAI'S TRIANGLE is a love letter to TRIANGLES. と実に狂気的なのだが、実際このゲームは本当に狂気的な愛の世界という側面を持っている。
それは不快なBGMや目に悪いエフェクトなど、プレイヤーが気持ちよく解けないようにするための仕掛けという形で偶発的に現れる。

一応真面目に解くこともできるものの惰性で解いたほうが圧倒的に早い自動生成パズルで、総手数を、プレイ時間を計測するのはなぜか?そしてそれをわざわざプレイヤーが常に確認できる形で表示するのはなぜか?
振り返って考えてみれば一つの答えに辿り着く。それらはプレイヤーがこのパズルゲームにどう向き合ったかを可視化している。
そう考えるとダークな世界観や嫌がらせのようなエフェクトにも納得がいく。三角形の世界は永遠に続くが、プレイヤーの集中力は永遠にはもたないし、私達には飽きであったり一つの区切りであったりと、自ずと終わりの瞬間が来る。
このゲームは真剣に向き合われることを拒みながらも、同時に真剣に向き合っていたことをそのまま記録してくれるのだ。

パズルの内容だけで語るならば、不快な思いをすることの多い単なる自動生成パズルでしかない。
だがプレイヤーを永遠から解放し、向き合っていた時間の振る舞いを炙り出すというゲームとしての構造は実によくできていた。
パズルの奴隷として真剣にパズルゲームに向き合おうとするマヌケのプライドが弄ばれたみたいで悔しいが、これは確かにラブレターであり、安易に触れてはいけない代物だったのだ。

(YANKAI'S TRIANGLE) 732問目クリア段階での記録

実際は、マヌケがマヌケであるがゆえにこれが自動生成パズルであると気づかず、真面目に逆算しながらプレイしていただけである。
実績が枯れ、300問あたりで流石に察してからも意地でも思考をやめず1000問まで頑張ろうとしたものの、500問以降真面目に考えて解くよりいたずらにくるくる回しているほうが時間対手数のコスパがいいという現実に直面して心が折れた、というのが真相である。
気づくのがあまりにも遅すぎるが、真面目に解いていた時間があったからこそ見えた世界でもあった。
ありがとうTriangle、さようならTriangle。

関連項目

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