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パズルゲーム感想アーカイブ

才気煥発の一打を夢見て “a”

一手クリアをルールとすることの呪縛。作られたスーパーショットに価値はあるのか?

a Screenshot

トレーラーが見つからなかったため画像に差し替え。
一発でゴールに入るように角度・力加減を調節してボールを打ち出すゲームである。放たれたボールは下向きの重力に従い放物線を描く。
動く障害物や反発係数の違う壁などのギミックがあり、これらをうまく組み合わせてゴールまで辿り着ける軌跡を考えなければならない。
画面外にボールが飛び出るとアウトであり、仮に上方に打ち上げて落下するのを待とうとしても画面外に出た時点で失敗となる。

わざわざ言及するのも馬鹿らしいが、この作品は全くもってパズルではない。
最大の力で打ち出してもボールの飛ぶ距離には限りがあるので、確かにギミックの使い方も含めて考えなければならないのだが、外せば即失敗ということはどんなに大仰なステージでも必然的に一打で全て解決できるという大きなヒントが勝手に付随するし、なにより考えてから打つよりも打ってから考えるほうがはるかに早くて簡単である。
リトライすると前回のパラメータが表示される仕様も相まって、このゲームに対するアプローチはゴール付近まで飛ぶざっくりとした軌跡を得るまで適当に打ってみて、残りの微調整をひたすら試行するという思考の入る余地が全くないものだった。
わずかな誤差で結果が大きく変わる物理演算特有の面白みがないわけではないのだが、それはパズルとしての面白みではないし、プレイ体験の上ではいたずらにやり直しの数が嵩むだけでただただストレスにしかならないので、結果的にゲームとしての面白みもなかったと言える。

一打クリア以外を認めないこの作品は、解決すべき事柄にいかなる枠組を用意したところで、必ず全てを同時に解決する神の一手の存在を担保している。その天下り的な構造は段階的な発想を重ねるパズルからは程遠い。

ちなみに、Stage 51はバグによりゴール地点が消滅してしまうためクリア不可能となっている。スキップ機能があるため全ての問題を遊ぶこと自体は可能だが、完全クリアにこだわるならばこの作品をプレイするべきではないだろう。

関連項目

Cybergate Technology製 物理演算ゲームシリーズ