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パズルゲーム感想アーカイブ

パズル・アバウト・ファティーグ “About Love, Hate and the other ones”

愛憎交々渦巻く中一際鈍く光る一つの感情、倦怠。

“I love you.” を囁くLoveと、“I hate you.” を囁くHateの二人で協力して赤いボタンを目指すパズルプラットフォーム。
二人の主人公の基本的な能力は1段までの高さを登れるだけと全く同じだが、ただ一つだけ違う点として彼らは他の生き物に働きかける正反対の能力を持っていて、Loveは1マス引き寄せ、Hateは1マス遠ざけることができる。彼らが放つエナジーは遮蔽物に当たると簡単に消えてしまうほど弱いが、消えない限りはどれだけ離れていても届くし、対象まで直線的に放つことができる。

二人の力を駆使して高台に登るための足場を作るという内容はパズルプラットフォームにふさわしく重力の克服が大枠となっている。
主人公の二人以外にも違う性質を持った生き物が6種類存在し、彼らは誘導次第で足場にも障害物にもなり得る。LoveとHateの位置関係と誘導の順序はそれぞれ一つ変わるだけでその後の選択肢も大きく変わってしまうので、ゴールに至るまでに何が必要なのかをよく考えた上で動かしていかなければならない。
パズルプラットフォームゆえやり直しが利かない非対称なパズルではあるが、幸いアンドゥは完備されているので考えやすくなっている。

ルールだけ見るとレガシーなパズルプラットフォームとして可能性は感じられるが、しかしながらレベルデザインは単調で、しかも無駄がかなり多い。
どの問題も解決すべき事柄が盤面の領域ごとに区切られていて、それをただ雑にくっつけただけというような構造が目立つ。ある場所で利用したキャラクターをさらに別の場所まで誘導するというような盤面全体を利用したねじれの構造がないので、いくら盤面のサイズを広げたところで解いても手応えもなく単調でつまらない。
このパズルは基本的に誘導するキャラクターを入り組んだ位置や互いに干渉する位置に置くことでねじれを作り、誰を動かすべきかの選択を主な枠組としているように見えるが、解決すべき事柄同士をねじらなかった結果か、一度も使わないキャラクターが余ってしまうことは少なくない。ただの足場として一度でも使われるならばマシなほうで、時に派手に余ることすらある始末である。
余りが出てしまうことに関してはLoveとHateもまた互いを足場として利用できる性質が絡んでいるように見えるが、段差の高さが不十分で抜け道を作ってしまっていたりなど塞ぎきれていない致命的な穴は他にも存在するので、それ以前のことのようにも感じる。

個人的には、せっかくのグリッド制パズルプラットフォームなのに、エナジーが直線的に飛ぶというルールが受け入れがたかったので、感じたつまらなさはレベルデザイン以前の問題でもあるかもしれない。
角度によってはうまく遮蔽物をすり抜けられるのだが、曖昧ゆえに模範解答だとしても抜け穴を掻い潜ったかのような後味の悪さが残ってしまう。少なくとも発射の方向を絞るくらいはあってほしかった。

関連項目

About Love and Hateシリーズ作品