パズル・アバウト・イリテーション “About Love, Hate And The Other Ones 2”
愛憎交々逆巻く中一際鋭く迸る一つの感情、焦燥。
盤面上に配置されたキャラクター達 “the other ones”と、彼らを1マス引き寄せるエナジーを放つ主人公 “Love”、そして1マス遠ざけるエナジーを放つもう一人の主人公 “Hate” によるパズルプラットフォーム “About Love, Hate and the other ones” の2作目である。
新しく追加されたthe other onesがいくつかいるが、LoveとHateの能力、そして既存のthe other onesなど、前作から続投しているキャラクターの性質に変化はない。
ただし、2Dだった前作から打って変わって今作では奥行きが追加され、盤面は2.5Dとなっている。
前作は解決すべき事柄同士のねじれがなく順に並べただけのような構造、そして余るキャラクター達といった無駄の多さから単調なパズルとなってしまっていて、ゆえに2.5Dに手を出すなど早計なのではないかと思いながらのプレイだった。
残念ながらその予想はある程度当たってしまっていて、今作にも残されてしまった無駄や大幅なショートカットが可能な抜け道は相変わらず存在し、枠組の単純な連結で盤面が冗長になる傾向も相変わらずだった。
ただし、改善が全くなかったわけではない。平均的に見れば無駄は確実に減っているし、中には限られたthe othersを動かす順序を問うとてもよくねじれた良問も存在していた。
2Dではあまりに便利すぎたエナジーも、2.5Dでは同じ奥行きにしか飛ばせないという制限によってルールが引き締められていたように思う。また、今作では45°斜め上には遮られて飛ばせないという変更もパズルをねじるのに一役買っていた。
やはりその直線的な挙動ゆえの曖昧さは好きになれそうにないものの、重力とはまた違う形で遮蔽物が壁となるギミックなので、パズルプラットフォームに取り入れるには面白いルールではあると思う。
しかしながら、レベルデザインへの注力が過ぎたのか、システムは2.5D化について行けていけてなく、それに伴う欠陥には常に煩わしさを感じさせられた。
キャラクターをすり抜けたり、誰もいない場所にエナジーが放ててしまったりなどといったLoveとHateの挙動の怪しさも十分な欠点だが、最も酷い欠点は全体的な操作性の悪さである。
盤面はおそらく空の3Dブロックの集合体で、その中に足場やキャラクターなどを収める形でシステムを構築しているのだろうが、結果としてどうなったかと言えば、目当てのブロックを選びにくくなってしまった、つまり目的の操作を行うことが極めて難しくなってしまっているのである。
これが中身の詰まったブロックだけのパズル、例えばルービックキューブなどであれば、視点によって見づらい面があったとしても、目的のブロックに触れるのにどこを指定すればいいかはわかりやすいだろう。だがこのパズルでは何もない空間ですらも空のブロックとして設定されているので、奥の場所を指定しようとして手前の場所に判定を吸われてしまったり、エナジーを放つ相手として選んだつもりがその頭上への移動として処理されてしまったりなど、誤操作が頻繁に起こる。
アンドゥの存在、そしてLoveとHateが足場を踏み外すことがないという仕様によってかろうじて最低限の快適さを保っているものの、この空のブロックによる操作性の悪さは目に余る。
重力に縛られないthe other onesやエナジーなどのためだろうか、この空のブロックは盤外にも広がっているが、視点変更の際はこれらを選んでしまう始末である。さらには、視点変更前に選択されたブロックの位置を保持する考えはないのか、視点変更すると選んだはずの場所とは違う場所に移動してしまったりなど、その処理体系は直感的からは程遠い。
そのくせ、アンドゥの未使用クリアで解除される実績を混ぜているのだからわけがわからない。誤操作の統計代わりにでもしたかったのか?
テンポの悪化をすんでのところで防いでくれているシステムを縛ってしまえば、待っているのはただただ募るばかりの苛立ちだけである。このパズルはただでさえ1問が長めなのに、こんな環境で快適にプレイできるわけがなかった。
そしてより腹立たしいことに、不具合なのかこの実績は結局解除されなかった。確認のために数周したのだが、その全てで失敗に終わった。
覚えた怒りはクソゲーと呼ぶのに十分すぎるほどだったが、レベルデザインの改善の事実によってそう呼ぶべきでないとの気持ちがわずかに上回った。
度々言及している通り、パズルゲームのデザインはレベルデザインだけではない。所詮外面といえど、時に素晴らしい内面すらも台無しにしてしまう破壊力を持つことすらある。
レベルデザインは前作を大きく上回っているのは確かである。だがこのような惨状では全体的に見れば前作以下である。