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パズルゲーム感想アーカイブ

軽快であり続けるフック&リール “SiNKR 2”

変わらないでいようとしても、無意識のうちに変わってしまうものはある。

SiNKR 2 Key Art

公式のトレーラーが削除されていたため、プレスキットの画像をもって代わりとした。
フックの付いた紐を巻き取ってブロックを引っかけることで枠まで運ぶパズル “SiNKR” の続編である。
パズルゲームにおけるナンバリングタイトルといえば、ギミックの種類やルールに追加が入るなど前作を土台として順当に進化を遂げた作品か、あるいは外面のデザインだけを引き継いでパズルの内容は全くの別物ということが多い印象なのだが、今作は基本ルールはもちろんのことギミックに至るまで何もかもが前作と同じである。その内容は前作の延長線上にあるもので、難易度が上がった問題集といった具合である。
パズルのルールに改定はないがゲームとしての改定はいくつか入っていて、fpsが上がって描画が滑らかになったり、グリッド表示が入って見やすくなったりなどの改善がなされている。

今作からSiNKRシリーズに触れる人も想定して、基本的なルールやギミック、テクニックに関するチュートリアル問題は前作と同様に収録されている。ただし終始簡単だった前作に対して、今作は簡単な問題は早々に消え、チュートリアルからしてブロックの切り離しや受け渡し、重ね合わせといった水面下の処理に由来する小手先のテクニックを要求する問題が出てくる。前作ではあまり有効的に使われていなかったフック同士の引っ掛けも今作では頻出のテクニックである。

とはいえ、難しいというのは前作と比較した上での話であり、今作をもってしてもなおこのパズルは簡単である。盤面を単純に比較すればかなりややこしくなったように見えるものの、ほとんどの問題は簡単に解ける独立した枠組が互いに何の干渉もないまま複数重ねられているだけで、丁寧に紐解けば見た目ほど複雑ではないことがわかる。難しく考えずに素直に解こうとすれば勝手にほどけてしまうことは少なくなかった。
要は解決すべき事柄の数が増えているだけで、事柄同士のねじれが増えて逆算が難しくなっているわけではない。
一応、ねじれのある問題が皆無というわけではない。唯一それが実現していて歯応えがあったのがフックの引っ張り合いの多い中盤の問題だが、それ以外はやはり正解への道のりが無駄に伸びただけのような気がした。

ちなみに、細かい修正の入ったUIについてだが、せっかくのグリッド表示も2マス刻みの不完全なものだったため紛らわしいから別になくてもよかったし、アンドゥ機能に全く修正が入っていないのが気になった。
アンドゥの仕様は前作から変わっていないのだろうか?ほとんど使っていないので正確な比較ができないのだが、画面外にブロックが吹き飛べば強制リトライ、盤面の履歴もどのタイミングで残しているのかよくわからず、はっきり言って無用の長物だった。

ギミックの種類を増やすことなく純粋に難易度を上げようとする姿勢は素晴らしいが、レベルデザインの枠組による難しさよりも内部処理の仕様をテクニックとして繰り上げるような難易度の上げ方が目立った今作を見ていると、このシリーズのパズルの難易度が上がりきった果ての姿はパズルアクションに近いものになるような気がする。
内部処理の理解が必須事項になる点においては謎解きゲームに化ける可能性すらもあるけど、それでも問題の作りやすさを考えたらブロックを移動パネルでぐるぐる回しながら割り込みに割り込みを重ねる、そんなパズルになりそうな気がする。
このシリーズの価値は簡単だが単調ではなく、そして心地よくテンポよく解けることにあると思っているのだが、この先さらに難しくなるのか、それとも単調へ足を踏み入れ水増しルートに入るのか、全く別のパズルになるのか……マヌケに先は読めそうにない。

関連項目

SiNKRシリーズ作品