初心者向けという盾 “Snakebird Primer”
Primerとは具体的にどのような層のことを指していたのだろうか?
この作品で一番難しいのはこの問いかもしれない。
パズルゲームにおけるレベルデザインの金字塔とも呼ぶべき芸術作品 “Snakebird” のPrimer、つまり入門編にあたる作品。
しかしながら、その出来に関しては前作から一転して疑問が残る結果となった。
前作の感想では、Snakebirdというパズルが思考の落とし穴が生まれやすい基本ルールという素晴らしいキャンバスを備えていること、そしてその上に高度に洗練されたエレガントなレベルデザインが描かれた傑作であることを述べた。
今作のような簡単な問題集をPrimerという形で出したのも、パズルとして難しくなりやすい土壌があることを理解していたからだと思うのだが、前作を全問クリアした分の思考の慣れを差し引いても、今作はあまりにも簡単すぎた。
今作がなぜ簡単「すぎる」のか、それには大きく分けて二つの理由があると思われる。
一つは、詰みの状況が徹底的に排除されていることだ。
重要なのはアンドゥを使うまでもなく立て直せてしまうという点で、今作はヘビが届かないことはあれど、部屋の中や通路で詰まるといった状況はほとんどない。
そのため手が止まることなくスムーズにあれこれ試せはするものの、詰みがないと考えているというよりもいたずらに遊んでいるかのような感覚に近い。
そしてもう一つは、今作のレベルデザインが正解に誘導する形になっていることだ。
入門編と銘打っている以上、思考を滞らせるダミールートを作ることは憚られたのだろうが、そもそも他に全く選択肢がないため自分で考えて正解に辿り着いたという手応えがなく、問題側から正解までの順路を用意されそれを辿っただけのような作業感が強く残ることとなってしまった。
結果的に、今作は最初から最後までチュートリアルが続くかのようなパズルだった。
確かにSnakebirdは非常に難しいパズルゲームではあるのだが、その入門に今作がふさわしいかといえば私はそうは思わない。
本当に入門編とするのならば、プレイヤーの挑戦意欲を信じてもう少し不親切に突き放した問題を用意すべきだったのではないだろうか。