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パズルゲーム感想アーカイブ

小さくても悪夢は悪夢 “Very Little Nightmares”

パズルの奴隷たるマヌケはホラーゲームが苦手である。
それは冷静な思考を奪うための設計が基本だからだ。恐怖はそのおまけでしかない。

レインコートの少女「シックス」が「胃袋 (モウ) 」の名を冠する謎の巨大船舶からの脱出を試みるホラーゲーム “Little Nightmares” の前日譚にあたる外伝作品。
……とのことだが、パズルの奴隷たるマヌケは当然のことながら未プレイでシリーズの知識など全くないので、それを踏まえての感想となる。
作中に文字は一切存在しないので、主人公の名前も、囚われた場所も私にはさっぱりわからなかった。わかったのはそこが不気味な館で、脱出しなければならなさそうだということだけだ。

ステージの基本構造はグリッド制の2.5Dで、移動先を選んでのオート移動となっている。高い所へは梯子などの昇降が可能な物が必要だが、等身大の高さまでならば自力で越えることができる。ステージには他にもアイテムやギミックが設置されていて、近づくことで対応したアクションを取ることができる。常識的にはそうやって使わないものが梯子代わりになったり、ゴミのようなものでも主人公のアクションに役立ったりなど、あの場所を歩き回るにあたって意外なものが関わることは少なくないので、ただ歩き回るだけではなく、何なら使えるのか、何が必要なのかを考えながらの探索が必要となってくる。
また、とても小さな悪夢といえども立派なホラーゲームであり、ビックリするほどではなくとも、ドキッとするような演出が随所に挟まれるので不気味な雰囲気の演出は十分だ。

ただ残念なことに、このゲームはパズルではなかった。
謎解きの内容は簡単なもので、解決すべき事柄はそれぞれ独立していて、互いにねじれたりなどはしていない。
解けずに立ち往生することもあったが、探索不足による見逃しによって解けなくなるだけで、謎解きのからくりに頭を抱えることは全くなかった。

そしてさらに残念なことに、このゲームは度々シビアなアクションを要求してくるもので、そのパズルからの乖離に振り回されたのが面倒で仕方がなかった。
それらはホラーゲームの演出のための単なる初見殺しというだけに留まらず、起こることを予期した上で俊敏に動かなければ間に合わないほどだ。中には謎解きが不完全ゆえに先に進めないのではないかと錯覚させるほど厳しいものもある。
無駄にハードルが高いのはオート移動だからだろうか?だがオート移動もさほど万能ではなく、経路を選べない、梯子を経由した移動先は選べず一旦梯子を選ばなければならない、画面に映っている範囲内しか移動先を指定できない、敵を前にすると主人公の動きがこわばるようになるなど難があるくせ無駄に精度を求めてくるので、謎解きを抜きにしてもなおストレスが溜まってしまう。

今作はシリーズ内でもパズルに偏った作品とのことらしいのだが本当なのだろうか?Little Nightmaresのジャンルは一応アドベンチャーなので謎解きはあると思うのだが、これよりはるかに簡単ということなのか、その他の割合が高すぎて霞んでいるのか、あるいはデベロッパー (本編はTarsier Studios、今作はAlike Studio) やプラットフォームの違いによる感覚の差か。
いずれにしろ、今作はマヌケに言わせれば自称パズルである。シリーズ未プレイのパズルの奴隷からすれば、ホラーゲームとしての魅力は理解できたものの奴隷労働の手を止めるほどではなく、本編がいかにパズルから外れた作品であるかを喧伝するかのような作品として映った。

関連項目

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