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パズルゲーム感想アーカイブ

水滴の二番煎じ “Oculux”

かつて覚えた既視感の正体は感化か誤読か盗用か。やらねば答えはわからない。

Oculux Screenshot

都合によりトレーラーは後記する。
移動し始めたら何かにぶつかるまで止まれない盤面上で、四方に散らばるダイヤモンドを集めてまわる滑る床のパズルである。

このパズルをプレイしたのは、先日プレイした滑る床のパズル “The Chronos Principle” にて、あるギミックの形状に既視感を覚えたことに端を発する。

(The Chronos Principle: 44) ぶつかると操作キャラクターと対消滅するトゲ付きブロックを避けて通る問題
The Chronos Principle: 44

そのギミックとはトゲの生えた方向に向かってぶつかってしまうと対消滅するブロックのことである。
このデザインを見て、私は過去にプレイした滑る床のパズル “Quell”を思い出していた。

(Quell: 1928-2-1 “Look Sharp”) 水滴を割るスパイクブロックに刺さらないように移動方向を見極めなければならない問題
Quell: 1928-2-1 “Look Sharp”

ぶつかった際の処理はそれぞれ異なるといえどデザインの類似は見ての通りである。
とはいえ、同じ滑る床のパズルでもそれぞれの主題は異なるものだったので、ギミックの形状を考えるにあたり、わかりやすいデザインとして模倣したのかと思っていた。
だが、同制作者による他作品を覗きこの作品を見つけて、その予想は正しくなかったことを知る。

改めて、以下が今作、Oculuxのトレーラーである。

ここに、Quellのトレーラーを並べてみる。

両者の類似はトレーラーだけでも露骨にわかるほどだ。
発売順は言うまでもなくQuellのほうがずっと先であり、その後Oculux → The Chronos Principleと続く。
つまり当初抱いた既視感だが、その真実はQuellのギミックのデザインを模倣してThe Chronos Principleに持ち込んだのではなく、その間にQuellそのものをそっくりそのまま模倣した作品が噛まされていたというわけだ。

既視感との一致に得心が行ったとはいえ、次に浮かぶのは当然盗用の疑惑である。
見た目は極度に似通っているといえど、その内容が影響を受けたリスペクトなのかただトレースしただけのパクリなのか、その具合は実際にやってみなければ判断できなかった。
模倣の具合を確かめるために消極的ながらもプレイするというのも変な話だが、これがプレイに至った経緯である。

しかしながら、その内容は悪意ある盗用というわけではなかったように思う。そこにはオリジナルの良問を作ろうとした努力が窺えた。
眠くなるような簡単なパズルしかなかったThe Chronos Principleに比べると遥かに難しく、パズルとして歯応えのあるものになっている。

とはいえ、テーマと共にエレガントなレベルデザインを詰めてみせたQuellに比べると全体的にかなり見劣りしてしまうことは流石に否めない。
問題のテーマがわからないまま解けてしまうことは少なくなく、中には水増しにもならないふざけた問題があったりする。
全ての問題がそういうわけではなく、中には長時間詰まってしまうような難しい問題もあったが、手数と盤面のサイズに依存したものが大半である。

良作への挑戦意欲は確かなものの、結局は内面も外面もQuellの劣化でしかなかった。
サクサク解ける、有料オプションとはいえアンドゥがある、という点で差別化ができるかもしれないが、レベルデザインの上では完敗と言えるだろう。

関連項目

同デベロッパーによる他作品の感想アーカイブ

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