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パズルゲーム感想アーカイブ

箱庭の雪遊び “A Good Snowman Is Hard To Build”

一段丸める手間一つ、二段重ねて二度手間に、三段積み上げもう一度。

シームレスな庭園を舞台に、指定されたエリアの中で三段の雪だるまを作る倉庫番ライクなパズル。
日本における雪だるまは名前の通り「だるま」を模したものが由来のため二段のイメージが強いが、海外においては “Snowman”、つまりヒトを模しているためあちらの雪だるまは頭部・胴体・脚部に相当する三段が一般的な形である。

それぞれの部屋には雪玉が3n個配置されていて、下から大中小のサイズで重なったn個の雪だるまを作ればその部屋はクリアとなる。
雪玉は1マス後ろから押すことで転がせるが、転がしている雪玉より大きな雪玉の上に重ねることができるほか、重なった雪玉は押すことで取り外しも行える。雪玉は雪の積もったエリアの上で転がすと雪を剥ぎ取ってサイズが一回り大きくなるが、大サイズの雪玉は積もった雪を吸収こそするがそれ以上に大きくなることはない。

このように、押す物体と操作キャラクターの位置が重要になるというまさしく倉庫番ライクなパズルであるがゆえ、植木鉢やバードバスといった庭園にふさわしい障害物の数々は道を詰め位置取りを難しくさせるように設置されている。
だがそれでもこのパズルはとても簡単だった。部屋の狭さの割に余白が広いこと、それによって雪が剥がしやすくなっていること、条件付きとはいえ雪玉の積み下ろしが可能なため1マス分の余白を確保できてしまうこと、シームレスであるがゆえに別の部屋から押し出すという手法が可能なこと、そして雪だるまを完成させる位置に指定がないことなど、易化の原因はとにかく多い。
中でも一番影響が大きいのはやはりそもそもの余白の広さだろう。盤面のサイズが小さいほど1マスの余白は相対的に広く映るし、ゴールに指定がないゆえに本来デッドエンドとして忌避される壁際すらも使えてしまう。
部屋の数、すなわち問題数も少ないのでこのパズルは手応えもないまま本当にあっという間に終わってしまう。後に何も残らないほど印象の弱いプレイ体験はさながら雪のようなものだった。

ネタバレ項目: ……?

……というのが表向きのゲーム内容で、本番は裏面が解放されてからである。
わざわざ問題選択のシステムがシームレスになっていた理由はここにある。裏面は通常のフィールド、つまり表面と連動していて、表で雪だるまを作ると裏ではその位置に雪玉が一つ設置される。裏には表裏を切り替えるベンチを除いて一切の障害物が取り払われている代わりに、雪玉が一段階ずつ小さくなるという表の雪面とは逆の作用をもたらす床が敷き詰められている。ちなみに表と違ってサイズの下限がないため、小さい雪玉を転がすと溶けて消えてしまう。
この制限下で表はもちろんのこと、裏でも雪玉を一つも余すことなく全ての雪だるまを作ることが最終目標となる。裏で一通りの雪だるまを作るということは、つまり表で雪だるま3個のグループを互いに3歩以内に届く位置に作る必要があるということで、組み合わせと位置の指定を考えなければいけないという制約が入るのである。

しかしながら、それでもなおこのパズルは簡単だった。裏の制限は確かに難易度を上げてはいるものの、そもそもパズルを簡単にしている要素を全て潰しきれているわけではないからだ。
このパズルで難しい要素を挙げるとするならば裏用の雪玉3個組を表でどう分けるかで、倉庫番そのものの難しさは裏面を導入してもなお引き出せてはいなかった。やはりこのパズルの一番の欠点は余白の広さで揺るがない。

また、裏面導入によって大して難しくなっていないだけでなく、テンポの悪化という新しい欠点を生み出してしまっていた。裏でうまくいかないとわざわざ表に戻って組み直さなけらばならないのはいくら簡単といえども手間である。そして3個組を作ることが一番難しいということは、詰まってしまうとこの作業を何度もやらされる羽目になるということでもある。
よくできたパズルだとしても、それが別のパズルのための作業になってしまえば退屈でしかなくなる。

手間といえば、部屋を跨いでの解法は裏込みのクリアを目指すにあたっては必須で散々使うものの、実は表だけのクリアに限れば必須ではなく、部屋内で雪だるま作りを完結させられれば蝶が寄って来て実績となる。だがこれに関する説明が一切なかったため、マヌケは100%クリア後に表を解き直す羽目になってしまった。
どんなに縛ったところで簡単なことには変わりない問題を各種縛りで何度も解き直させられるこのパズルは、アイデアこそユニークではあるものの面白くはなかった。

関連項目

A Monster's Expedition + Earlier Adventures収録作品

同デベロッパーによる他作品の感想アーカイブ