狭きで通すヘビ “Quetzalcoatl”
狭い空間に閉じ込められることで生まれる苦しみと、そこから解放されることで生まれる喜び。
シンプルイズベストな1Buttonにしては珍しくわかりにくいトレーラーだが、ゲームの内容は色付きの円が埋め込まれたヘビの両端をスライドさせ、対応する色のエリアにぴったり当て嵌まるように動かしていくというシンプルなスライドパズルである。
通った道筋をなぞるように後続のパーツも動いていくという、いわゆるヘビゲームのヘビがそのままスライドパズルに転化した形である。
初期状態がクリア条件から上下または左右が反転したものという問題が多いが、たったそれだけの些細な違いでも入れ替えようとなるとかなりの手間を要するのがスライドパズルの侮れないところである。転回のための空間は最小限しか用意されていないので、方向転換するための道のりは長い。
長いヘビをスライドさせるのにスペースを空けようとすると別のヘビが道を塞ぐ、動かせるヘビがいない……このパズルを解いている間は、こういったもどかしさと常に隣り合わせである。
だからこそ、ほどけた瞬間がたまらなく気持ちいい。
問題が解けた時の喜びには難問が解けたという達成感も少なからずあるが、ヘビがほどけて自由を取り戻したという解放感のほうがずっと大きかった。
実際このパズルは最小限の空きしかないスライドパズルという点で既に十分難しいが、他に類を見ないほど難しいわけではない。達成感を得るのに難しさばかりを求める必要はないのだ。
1Button Complete Puzzle Bundleの中でも難しいほうに分類される作品であり、大してパズルが好きでもない人が単なる暇潰しのつもりで手を出そうものなら解けない苦しみに潰される羽目になりかねない。
それでも、同バンドルの6作品の中から一番のおすすめの作品を挙げるならば、手軽さ、難しさ、得られる達成感といったもののバランスが最もいいパズルとしてこの作品を選びたい。
余談だが、頭が一歩動けば尾も一歩動くという性質を利用して、ヘビの両端は重ね合わせるように動かせるというルールがある。その説明がこれ。

私は勝手にウロボロス移動と呼んでいるけど、日本語での説明文が「ヘビが勝手に動き回ることもあるので要注意」。
その説明文は誤解を生むと思うんだけどなあ……。