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パズルゲーム感想アーカイブ

「切断」を極めた果てに “Ultra Sharp”

鍛冶屋も刀剣商もなまくらばかり。1Buttonの明日はどっちだ。

1Button製物理演算パズル “Super Sharp” に続く二作目。
基本ルールはそのままに、クリア条件にいくつかのバリエーションが追加された。

内容は問題数こそ120→192と大幅に増量したものの、難易度は前作に遠く及ばない。
そして今作はパブリッシャーが悪名高きLion Studiosに変わったことによる影響か、買い切りゲームとしてシンプルイズベストを極める努力よりも、基本無料ゲームとしていかに多く広告を挟むかの工夫を凝らした作品となっている。
広告除去オプションを買わなければ、基本的なバナー広告に加えて問題と問題の間にインタースティシャル広告が挟まれる。広告料はインタースティシャル広告のほうが圧倒的に高いので、これをたくさん見せるためか少しでもリセットが嵩もうものなら問題をスキップするよう催促するエフェクトがすぐに出てくる。
大変苛立たしい仕様だが、このエフェクトは広告除去オプションを導入しても切ることができなくてますます腹が立つ。物理演算パズルは解法が見えていてもある程度の試行が必要なものであり、リセットを数回した程度で詰まったかのように判断するというのがそもそもおかしいのだが。

それを無視してレベルデザインの側面から見ても、前作で悩まされたような解決の糸口がさっぱりわからない問題というのは皆無であり、あるのはただただ水増しされた惰性のような問題ばかりである。
前作の経験は多少は役に立ったものの、今作の難易度を鑑みるに別になくとも差し支えなかっただろう。

今作はどんなに優秀な作り手でも手を組む相手を見誤れば駄作が出来上がるという好例だろう。
願わくば1Buttonの切れ味が次作では復活してほしいところである。

追記

今日までに問題追加のアップデートが4回入り、問題数は全部で320となった。
前作のコピペに等しいような水増しは徐々になくなっていったものの、それでも300問近くも退屈な問題を続けてようやく前作の難易度に追いつくという有様である。
その内容もリトライ数を稼がせるためか、解法が見えているのに試行回数の暴力を避けて通れない悪問が多く、貴重な良難問も埋もれる始末である。
1Buttonの切れ味復活の日は遠そうだ。

追記

この作品はiOS 14へのアップデートによって動作しなくなってしまったが、それに対してパブリッシャーが行ったのは作品のアップデートではなく、iOS 14以降で動くように作り直したものを同名の別作品として出すことだった。そのやり口は流石悪徳パブリッシャーといったところ。マヌケはそのあまりの誠意のなさに呆れてこの作品は墓送り……つまり欠陥を抱えていて遊べないゲームとして放棄するつもりだった。
だがそれから3年経った今、iPhoneの機種変更に伴い少なくない数の作品がストアから削除されてしまっている事実を前にして、プレイ可能な形で残せるのであればできるうちに残した方がいいだろうと思い、iOS 14以降版をダウンロードした。

プレイ開始直後にでかでかと映るパブリッシャーのロゴに早速気が滅入る。昔はデベロッパーの1Buttonだけだったのに、その大きさの比率に権力差が透けて見えるようで嫌になる。
問題数は320から448と大幅に増えていたが、それよりもまず目に付いたのが様変わりしたUIである。デイリーって何だよ。スキンって何だよ。シンプルイズベストな1ButtonがこんなごちゃついたUIにOK出したなんて信じたくない……。
過去版からのデータの引き継ぎは存在しないし、広告除去の課金も別物である。

流石に5年前に遊んだ水増し作業ゲーの内容を正確に覚えているはずもなく、それらが間違いなく当時解いた問題かどうかは全く自信がないのだが、この体たらくで問題を改めるような手間をかけるとも思えないし、なにより今解いても退屈なのは変わらなかったので同じということなんだろう。
スキップのエフェクトがしつこいのも相変わらずだし。

アップデートに合わせて段階的にプレイしていた昔と違い、今回は連続したプレイだったためか、320問目以前の問題も以降の問題も共通して、狙いの動作をさせるのに微調整という名の総当たりを要求される場面が多かったように感じた。
少しのずれで結果が大きく変わることが多々あるせいで、規定手数内クリアが狙いにくい。手数制限を露骨に悪用しているというか、やはり広告を見せるための問題作りをしているからなのか。
Super SharpのWalkthroughを見た時の感動は今でも覚えているが、あの感動を超える問題は450近い問題を尽くしてもなお存在していない。それどころか、この作品にあったのは切る位置をずらす作業だけ。
設計思想が効率的な広告料の回収であるならば、この作品はどんなに問題が増えたところで達成感を得られることはきっとないのだろう。

関連項目

1Button製 物理演算パズルシリーズ

同デベロッパーによる他作品の感想アーカイブ